【プロ インプレッション】(後編)アウトドアライター高橋庄太郎が「NXIS(ネクシス)」コレクション4モデルを徹底比較
アウトドアライター・高橋庄太郎さんが、4モデル展開しているハイパフォーマンストレイルシューズ「NXIS(ネクシス)」の違いを徹底比較。前編では、<ネクシス4モデルの"共通する特徴"と"異なる特徴"について>をご紹介。後編の今回は、ネクシス4モデルを履き比べ、それぞれのシューズの特性とどんな状況に適しているのか。これを読めば、どのモデルが自分のスタイルに合うか必ずわかる!
寄稿・写真:高橋庄太郎
「前編」のレポートでは、「ネクシス コレクション」4モデルの"共通する特徴"と"異なる特徴"について解説した。そのなかでも、防水性を重視した「エヴォ」と、通気性を考慮した「スピード」という点が、最大の特徴である。ここからの「後編」では4モデルを履き比べし、それぞれのシューズがどのような特性を持ち、どんな状況に適しているのか、より詳しく説明していきたい。
① ネクシス エヴォ ミッド ウォータープルーフ & ネクシス エヴォ ウォータープルーフ
ともに雨天や濡れた地面に強い「防水性」ながら、足首のアッパーの高さが異なるという2モデルだ。
全体的なフィット感は、やはり「ミッド」のほうが高い。
足首まで程よく締め付けられ、シューズがずれる感覚が少ない。
とくにシューズに負荷がかかる下り道や岩が多い難路では、その違いがよくわかる。
とはいえ、ローカットでも"KONNECTFIT(コネクトフィット)"のおかげでフィット感はかなりキープされている。
ローカットのシューズとしては、「エヴォ」の安定感はなかなかのものだ。
水たまりに足を入れたときの安心感は、これもミッドカットが上。構造上、仕方ないことだが、深い水に入り込むとローカットは足首部分から浸水しやすいのである。
しかしアッパーの丈が低い分、ローカットのほうがシューズ内部の蒸れは少なく、登り道を中心に足さばきも軽く歩ける。ローカットにも大きなメリットがあるのだ。足さばきのよさを優先して考えるか、下り道や難路での安定性を優先して考えるか、そんなことがどちらを選ぶべきかの差になってきそうだ。
② ネクシス スピード ミッド & ネクシス スピード
ともに、あえて「非防水性」のアッパーにすることで、暑い時期やアクティブに体を動かしたときでもシューズ内部が蒸れにくいのが特徴。ただし足首のアッパーの高さが異なるという2モデルだ。
履くとすぐに、スースーとした外部の空気を足に感じる。すばらしい通気性だ。これだけ通気性が高いと、シューズ内部が蒸れる感覚は、ミッドカットでもローカットでもそれほど大きな差は感じられない。
しかし当然ながら、より涼しいのはローカットタイプだ。
アッパーの素材が柔らかいので、ミッドカットでも屈曲性は十分であった。
だが屈曲性に関しても、これまたローカットのほうが高いのはいうまでもない。
歩行中の安定感が高いのは、ミッドカット。
テント泊や小屋泊のときなどの重い荷物のときは、ローカットでは荷重を支えきれず、ミッドカットのほうが安心なのである。だが、荷物が軽ければ、ローカットでも十分。このようにアッパーの高さによって疲労感や怪我の可能性が変わってくる可能性が考えられ、シューズを選ぶ際のポイントになる。
歩行時に雨が降っていなくても、前日の雨や朝露などによってシューズはどうしても濡れやすいものだ。
このとき、アッパーに防水性どころか撥水性すらも持たない「スピード」はどうしても水分を吸収してしまう。これはミッドカットでもローカットでも同様だ。しかし生地の水はけはよく、シューズが過度に重くなるほどではない。
アッパーの高さによる歩行中の安定感に関しては、①と同じ。歩きやすい場所なのか、そうでないのか、それに加えて足さばきのよさなど、自分が優先することに合わせて、ミッドカットとローカットを選び分けるとよさそうである。
③ ネクシス エヴォ ミッド ウォータープルーフ & ネクシス ミッド スピード
どちらもミッドカットながら、防水タイプと非防水タイプ。アッパーの持ち味の違い、そして足首部分の"KONNECTFIT"の有無以外にも両者には細かな違いがある。
見てほしい。じつはシューレースの通し方も大きく異なっているのだ。
ハトメ代わりの細いコードに通す「エヴォ」に対し、「スピード」が通すのはコードよりも太いテープ状のパーツである。
また、「エヴォ」はシューレースのいちばん上はフックにかける方式だが、「スピード」はハトメに通す仕組みだ。
試してみるとわかるが、すべてしっかりと締め付ければ、緩みにくいのは「エヴォ」。しかし、わずかながら手間がかかる。一方、シンプルで簡単なのは「スピード」。スム-ズにすばやく締め付けられる。
ただ、締め付けている途中で力を抜くと、「スピード」は緩みやすい。
また、足入れのしやすさでいえば、フックからシューレースを外せば大きく広がる「エヴォ」のほうがラクではある。
これだけシューレースの通し方が違うのだから、歩行中の安定感は大きく変わるのではないかと、僕は想像していた。
しかし、どちらもそれほどの差は感じられなかったというのが、正直なところ。ただしそれはシューズが乾燥しているときの話だ。
シューズのアッパーやシューレースが濡れると、「スピード」のほうは少し緩くなる感じがある。
とくに下り道ではシューズがずれると歩きにくい。場合によっては、歩行中に締め直したほうがますます快適に歩けるだろう。
また、下の写真右側の「スピード」には設けられていないが、左側の「エヴォ」にはつけられているのが、シューズ内部でアキレス腱が当たる部分の小さな黄色いパッドだ。
これは"COMFORT HEEL CONTROL(コンフォートヒールコントロール)"という工夫で、かかとの浮き上がりを抑えるもの。そのために、歩行中にかかとが無用に上がる心配は「エヴォ」のほうがたしかに少ない。このクッションは、アキレス腱の保護にもつながるのだからありがたい。
そして最後に、両者の決定的な違いである防水性について見てみよう。
シューズ内部をドライに保ちたいのならば、いうまでもなく「エヴォ」である。とくにミッドカットは安心感が高い。防水性を持たない「スピード」は当然濡れるが、その代わりにシューズ内部にまで風が通り、ひとたび天気が良くなれば、すばやく乾燥する。そしてなにより、履いていて涼しい。これは大きな長所だ。
④ ネクシス エヴォ ウォータープルーフ & ネクシス スピード
③と同じ「エヴォ」と「スピード」の比較だが、どちらもローカットカット。「エヴォ」のほうはやはり足首部分の"KONNECTFIT"を搭載している。
シューレースの通し方の違いは③と同様で、フィット感の違いも似ている。
だが、こちらはローカットだけに、調整できるのは足の甲の部分のみ。すると「エヴォ」の緩みにくさはますます効果的だ。
どちらもローカットゆえに、岩の上などでは体の安定感が保ちにくいのは否めない。柔らかな「スピード」はとくに体が揺らぎやすい気がする。
このような場所では、どうしてもミッドカットが優位である。
だが、平坦な場所でのローカットは、ミッドカット以上に足さばきがいい。
「スピード」はもちろんスピーディーに、「エヴォ」も大差なくスピーディーに行動することができる。なかでも「スピード」はアッパーを通して空気の流れを感じるほどで、蒸し暑い時期や場所では「エヴォ」よりも調子がいい。同じローカットでも、シューズ内部の蒸れはかなり異なるのである。
ちなみに「ネクシス エヴォ ミッド ウォータープルーフ」には搭載されていた“KONNECTFIT”は、「ネクシス エヴォ ウォータープルーフ」にはついていない。
そのために、かかとの浮き上がりについては、これらローカット2モデルに大きな違いはないようだ。
シューズの濡れに関しても、③と同様である。
ただし、同じ「スピード」でも、足を覆う面積が少ないローカットは、ミッドカットほど濡れた感覚が少ない。それに防水タイプの「エヴォ」は内部に浸水すると、流れ出てくることはなく溜まる一方だが、非防水タイプ「スピード」ならば一定以上の水分は保たれず、濡れていても通気性はキープされている。だから、ますます濡れは気にならない。
下の写真は、フットベッドを外した状態だ。左側が「エヴォ」で、右側が「スピード」である。
「スピード」のほうは底面に小孔が並び、こんな部分でも水はけのよさを考慮していることがわかる。
外したフットベッドはこちら。これは4タイプとも共通だ。非常にクッション性が高く、地面からの衝撃を緩和するのに役立っている。
ただし、水分を含みやすい。とくに濡れを気にせず「スピード」を履いた場合は、脱いでから力を入れて絞ると、驚くほど水が流れてくることもある。帰宅後に収納する際は、このフットベッドも十分に乾燥させるのを忘れないでほしい。
このような機能性をもつ「ネクシス コレクション」。最後にそれぞれのモデルの特性をまとめてみよう。
「ネクシス エヴォ ミッド ウォータープルーフ」でも418g(27㎝片足)と軽量なので、ネクシスはどのモデルも"歩行が軽やか"なのは大前提だが、そのなかでもそれぞれのモデルとくにどのような特徴を持っているのか、グラフで見ていただきたい。
「防水性」
あえて防水性をなくした「スピード」はともかく、ミッドカットとローカットの「エヴォ」を比べれば、雨に強いのはやはりミッドカット。
「通気性(蒸れにくさ)」
「スピード」はどちらも抜群の通気性だが、より蒸れないのはアッパーの面積が少ないローカット。防水性が高い「エヴォ」はどうしても「スピード」ほど蒸れにくくはならない。だが、アッパーの面積が広いミッドカットよりもローカットのほうが蒸れを抑えられる。
「安定性」
「スピード」「エヴォ」ともに、ローカットよりもミッドカットのほうが安定性は高い。また、濡れるとわずかにアッパーが伸びる感じがする「スピード」よりも、アッパーに張りがある「エヴォ」のほうが、安定性はさらに高くなる。
「歩行時の軽やかさ」
足首が動かしにくい「ミッドカット」よりも「ローカット」。とくに素材が硬めの「エヴォ」よりも柔らかな「スピード」は、ますます軽快に歩ける。
僕個人の用途と好みでいえば、数日かけて歩く「縦走」のような登山には、雨濡れに強い「ネクシス エヴォ ミッド ウォータープルーフ」。最後の日までシューズ内部をできるだけドライに保ったまま行動したいし、数日かけて歩く場合は荷物が重くなるため、安定性が高いミッドカットがいいのだ。
「日帰り」のときは「ネクシス スピード」。荷物が軽いのでローカットでも体は安定し、汗かきの僕には歩行中に涼しいのは何よりありがたい。たとえシューズが濡れても、日帰り登山ならば下山後に履き替えればいい。とくに自分のクルマで山へ行くときは履き替え用の別のシューズはいくらでも持っていけるのだから、濡れてもまったくかまわないと思う。
縦走時でも荷物が軽いときは「ネクシス エヴォ ウォータープルーフ」も便利そうだ。“蒸し暑い時期に難路を歩く”ときなどには「ネクシス スピード ミッド」も活躍するに違いない。もちろん4タイプすべて持っていたら、とても便利なのだが……。
参考になっただろうか? このような特性を踏まえ、自分にいちばん合う「ネクシス」を4つのコレクションから探してみてもらいたい。
アウトドアライター高橋庄太郎が「NXIS(ネクシス)」コレクション4モデルを徹底比較
高橋庄太郎(アウトドアライター)
高校の山岳部で山歩きをはじめ、出版社勤務後にフリーランスのライターに。著書に『山道具 選び方、使い方』『テント泊山行の基本』など。近年はアウトドア系ウェブメディアでの連載やイベント出演が多く、アウトドアギアのプロデュースも行っている。Instagram:@shotarotakahashi
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