【プロ インプレッション】(前編)アウトドアライター高橋庄太郎が「NXIS(ネクシス)」コレクション4モデルを徹底比較
アウトドアライター・高橋庄太郎さんが、4モデル展開しているハイパフォーマンストレイルシューズ「NXIS(ネクシス)」の違いを徹底比較。前編の今回は、ネクシス4モデルの"共通する特徴"と"異なる特徴"について。これを読めば、どのモデルが自分のスタイルに合うか必ずわかる!
寄稿・写真:高橋庄太郎
これからのキーンを牽引するトレッキング系シューズが「ネクシス」だ。このネクシスは数種のモデルが揃えられた“コレクション”で、はじめに先行して「ネクシス エヴォ ミッド ウォータープルーフ」が登場。このモデルに関しては、僕は以前テストを行ない、インプレッションレポートにまとめている。ここから続いていくネクシス コレクションのレポートをより理解していただくためには、そのレポートを最初に目を通していただけるとよいかもしれない。
さて、今季から「ネクシス コレクション」は、4モデルがラインナップされている。すなわち「ネクシス エヴォ ミッド ウォータープルーフ」「ネクシス エヴォ ウォータープルーフ」、「ネクシス スピード ミッド」、「ネクシス スピード」である。それらの特徴がどのように異なるのか、ごく簡単に説明すれば……。
➤「ネクシス エヴォ ミッド ウォータープルーフ」→ 防水タイプ×ミッドカット
➤「ネクシス エヴォ ウォータープルーフ」→ 防水タイプ×ローカット
➤「ネクシス スピード ミッド」→ 非防水タイプ×ミッドカット
➤「ネクシス スピード」→ 非防水タイプ×ローカット
キーン独自の透湿防水テクノロジーである"キーン・ドライ"を用い、アッパーに防水性を持たせているタイプが「エヴォ」で、アッパーの通気性を高めるために、あえて防水性を持たせていないタイプが「スピード」というわけだ。そしてモデル名に「ミッド」が入っているシューズは、文字通りミッドカットであり、とくになにも表記がないシューズはローカットとなる。つまり"防水"と"非防水"、"ミッドカット"と"ローカット"という4つの特徴を掛け合わせることで、現在のネクシス コレクションは4タイプが生まれているのである。
4タイプといっても、そこは同じネクシス コレクション。"共通する特徴"は数多い。もちろん、その一方ではそれぞれが"異なる特徴"を持っているからこそ、4タイプに分かれているのである。この「前編」レポートでは、それら"共通する特徴"と"異なる特徴"について把握していただきたい。
"共通する特徴"としてはじめに挙げられるのは、すべてのモデルで完全に同じものが使われているアウトソールだ。
写真は「ネクシス スピード ミッド」だが、他の3モデルもラグのパターンはまったく同じ。違うのは色だけである。
難路でも滑りにくく、グリップ力は上々だ。
屈曲性も高く、足の動きを妨げない。安心感が高いアウトソールである。
つま先の保護機能を高める"トゥ・プロテクション"も共通だ。
岩や木の根に足をぶつけた際の衝撃を緩和し、怪我を防止するのに役立っている。
これらアウトソールとトゥ・プロテクションに関しては、先に述べた「ネクシス エヴォ ミッド ウォータープルーフ」のインプレッションレポートをお読みいただけると、より詳しいことがご理解いただけるはずだ。
次は"異なる特徴"をチェックしよう。
以下の写真の左側2つは「スピード」で、右側2つは「エヴォ」である。それぞれミッドカットとローカットが並んでいるが、アッパーの高さの差は7㎝程度だ(27cmで計測)。
この差は、足首のホールド感、シューズ内部の蒸れ、歩行中の防水性の高さなどに関わってくる。そのあたりの詳しいことは、それぞれを比較しながらテストした「後編」のレポートをお読みいただきたい。
アッパーの丈とともに"足首部分の工夫"を比較したのが以下の写真だ。左側がミッドカット、右側がローカット。そしてそれらの上が「スピード」で、下が「エヴォ」である。
写真を見ると気づくのは、ミッドカットの2モデルはアッパーの踝部分に三角形型のパッドが入っていること。骨の出っ張っている部分を重点的に保護するために設けられたものだ。また、「エヴォ」の2モデルは足首周りへV字型にイエローのコードラインが延びているのがわかる。これは"KONNECTFIT(コネクトフィット)"という工夫で、このコードはシューレースと連動し、シューレースを強く引くと足首周りのフィット感が高まる。つまり、「スピード」よりも「エヴォ」のほうが足首周りのフィット感の高さは期待できるということだ。
さて、「エヴォ」と「スピード」の最大の違いは、重視しているポイントが"防水性"なのか、"通気性"なのかということ。そのことはアッパーの表面を見るだけでも、すぐに理解できる。
左が「スピード」で、右が「エヴォ」。どちらも広い意味ではメッシュ素材だが、触感が柔らかな「スピード」は、口を当てて息を吹き込むとラクに空気が抜けるほど通気性が高い。だが、触感がいくぶん硬い「エヴォ」は息を吹き込んでも止まってしまう。アッパーの裏側のキーン・ドライは防水性を高める一方で、通気は遮断しているからだ。もちろんキーン・ドライは透湿性を持っているが、たんに"内部の蒸れを可能な限り逃がす"という点では、いくら透湿性が高くても、通気性のよさにはかなわないのである。
少なくても現代のテクノロジーでは、"防水性があって通気性も高い"という素材はない。防水性と通気性は、矛盾を抱えた機能なのだ。そこで、蒸れの緩和はほどほどにとどめつつ、防水性を重視したのが「エヴォ」の2モデルで、防水性に関しては割り切り、蒸れにくさを最大限に考慮したのが「スピード」の2モデルというわけなのである。そしてそれぞれ足首のサポート感によって「ミッドカット」タイプと「ローカット」タイプを作り分けている。
ネクシス コレクションの4モデルの違いが、イメージできただろうか?
ざっくりといえば、悪天候時に備えて防水性を考慮した「エヴォ」は一般的な登山向けで、高い通気性によって汗による蒸れを排した「スピード」はよりアクティブなスピードハイクや、トレイルランニング的なアクティビティ向け。その方向性に合わせてディテールもデザインされているのである。
アウトドアライター高橋庄太郎が「NXIS(ネクシス)」コレクション4モデルを徹底比較。
高橋庄太郎(アウトドアライター)
高校の山岳部で山歩きをはじめ、出版社勤務後にフリーランスのライターに。著書に『山道具 選び方、使い方』『テント泊山行の基本』など。近年はアウトドア系ウェブメディアでの連載やイベント出演が多く、アウトドアギアのプロデュースも行っている。Instagram:@shotarotakahashi
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