KEEN UTILITY JAPAN PROJECT vol.7 [ KEEN UTILITY x SUGAHARA GRASS ]
SUGAHARA GRASSWORKS / Kenji Matsuura
FORCUS MODEL / KANSAS CITY KBF WP
ーガラスの道に進んだきっかけを教えてください
松浦「都内の大学で工学を専攻していたのですが、何か物足りなくて…。時間はたくさんあったので、興味のあったものづくりで趣味を始めようと調べていたら、下宿先から自転車で行ける場所に個人作家さんが主宰しているガラス教室があったので、始めてみたらどっぷりとハマりました」
ー趣味から菅原工芸硝子(以下Sghr スガハラ)へ就職し、ガラスを仕事にしようと思ったのはなぜですか?
松浦「就職を考えるようになったときに大学で専攻していた分野か、ガラスの世界へ行くか2択を考えていました。ガラスをやっている人って作家などを目指す人が多いのですが、僕は作家ではなく、やるならプロダクト寄りの仕事がしたいと思っていろいろと調べていたら、地元の千葉・九十九里にSghr スガハラがあることを知って、もう行くしかないなって思いました。2000年に入社して、21年目になります」
ーSghr スガハラの特徴はどんなところですか?
松浦「いちばんの魅力は、職人が製品のデザインや開発を行うということ。そういうのってテストや考えたりする時間が必要になってくるのですが、うちは休み時間や休みの日に溶けているガラスや設備を自由に使えるので、すごくトライしやすい環境が整っています。ガラス好きにとっては天国のような場所ですよね (笑)。直営店もあり、年に一回新製品の発表会があって、その場に職人が行って、お客様に直接デザインした製品を説明できる機会があるので、直接反応を頂けて、お客様の存在を身近に感じることができます。何年もやっていると顔見知りの方もいたり、応援してくれる方もいて、いいものができると早くみなさんにお披露目したいという気持ちになります。そういう環境ってなかなかないと思いますし、やりがいがあります」
ー確かにお客様との窓口にはセールスや営業がいたりして、分業している企業が多いですよね。自社開発はいつ頃から行われているのですか?
松浦「1970年代から行っているそうです。というのも、オイルショックがあって、モノが全然売れなくなった時代があったので、その頃は下請けをやっていたのですが、やっぱり不景気になると自分たちでできることが少なくなってしまうので、自社開発に進んだそうです」
ー松浦さんがものづくりをしているときに、大切にしていることは?
松浦「とにかくガラスの魅力を最大限に引き出すことです。ガラスって透明でもともとが液体なので、すごく柔らかな表現を得意としていながらも、面を削りとってシャープになったり、どんなカラーにもできるので、さまざまな表現が可能です。ですから、それをいかにうまく引き出せるかを常に考えています。たんたんと作業をしているようですが、当然失敗もあったりして…。その失敗のなかでもキラリと光るいいものがあって、例えば垂れるガラスの様が綺麗だったり、伸びて棒状になったガラスに当たった光が虹色に見えたり。そういう一瞬一瞬って作り手だから見えると思うので、綺麗な表情をうまくカタチにして、多くの人に見てもらえたらいいなという思いで作業をしています」
ー作業中に履いている、KANSAS CITY KBF WPの感想を教えてください
松浦「とにかく安心感が抜群です。週に一度、溶けたガラスが入っているツボを交換する作業がありまして…。それがけっこう激しい工程で、窯の火は落とせないので、火を入れたままツボを交換するのです。積み上がったレンガのなかにツボが入っていまして、鉄の棒でレンガを叩き割って、ツボを交換して、レンガを積み上げて…、というような作業で、私も何度か足にレンガが落ちて痛い思いをしたこともあるので、そういう作業が安心してできるのは助かります。熱いので、フェイスガードや前がけ、熱から保護する手袋などで防護はしていますが、意外と足首が盲点なんです。この靴はきちんとガードされていたので、足首が熱すぎて窯の前に立っていられないということもなかったですね」
ーシューズに関して、まわりのスタッフたちから意見などありましたか?
松浦「安全靴を履いている人や、履いたことある人たちもいて、一番は軽いという声が多かったです。クッション性が高い点もいいですね。化繊だといつの間にか溶けちゃったり、穴が空いていたり、ガラス工場なので、ガラスを踏むこともあるので、やっぱり丈夫なのはありがたいです。欲を言えば、暑い現場なので、さらに通気性があると快適かもしれない。あと、個人的にはド派手なデザインもあると嬉しいです(笑)」
ー最後に今後の展望を教えてください。
松浦「おかげさまで、Sghr スガハラというブランドは、多くの方に支持して頂き、飲食店などでも使って頂けているのですが、それでもまだ興味のある人だけで止まっている印象があります。もっと興味がない人にも振り向いてもらえるように仕掛けを作っていければと考えています。作っているものは、品質もデザインもいいものばかりだと自信を持っているので、料理好き、食器好きな人たち以外にも広げていきたいです」
ーありがとうございました。
Profile
菅原硝子工芸株式会社
取締役 開発部 部長
伝統工芸士 松浦健司
学生時代にガラスの魅力に引き込まれ、21年間の月日を積み重ね、今ではSghr スガハラの製品開発の中心を担っている。Sghr スガハラを代表する製品から、革新的な製品のデザインも手掛けている。ガラスの魅力を引き出すため日々研究を重ねつつ、ガラスの魅力を、より多くの方へ広げることを目指し活動をしている。