フィールドアクティビティに精通したアウトドア専門家に「レヴェルⅣ EXPミッドポーラー」をテストしていただきました。
このブログでは、アウトドア専門家からのレビューをご紹介します。
レヴェルⅣ EXPミッドポーラー
「キーン」のシューズといえば、第一に“サンダル”を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、じつは“スノーシューズ”の評価も高く、これまでに「雪の上でも温かくて滑りにくい」という数々のモデルが登場しています。
そんななか、今期デビューしたのが「レヴェルⅣ EXPミッドポーラー」。ますます履き心地が向上し、雪上トレッキングや雪遊びがもっと楽しくなりそうな新作です。今回は、実際に雪山で試しながら、その実力を見ていきたいと思います。
レヴェルⅣ EXPミッドポーラーの特徴は、雪上での軽快性にあります。アッパーは通気性に優れたパフォーマンスメッシュで、擦れやすい場所や屈曲部はTPU素材で強化していますが、それでいて重量は片足27cmで589g。雪山用シューズとは思えない軽量さです。
また、真横から見ると、つま先が少しせりあがっているのがわかります。
これは、前方への蹴り出しやすさを重視したデザイン。雪山用のシューズには先端まで比較的直線的なソールも多いのですが、それらは高山の急峻な地形に合わせているから。それに対し、レヴェルⅣ EXPミッドポーラーは緩やかな低山に合わせ、歩きやすさを重視しているのです。
実際に歩いてみると、スピーディに行動できるのがよくわかります。
歩行に無駄な力を必要としないので、疲労も軽減されるのを実感できました。
雪山向けだけあって、保温性もよく考えられています。
リサイクルPETを利用したキーン独自の保温素材“KEEN.WARM”を200g使用し、寒冷地にも対応する設計です。
フットベッド(インソール)も工夫されています。
このシューズに使われているのは、“サーマルヒートシールドフットベッド”。足裏に当たる面は起毛させてあり、少し触るだけで温かさを感じました。
更に、アウトソールとフットベッドの間に配置されているウール素材の“ヒートトラポレーターテクノロジー”が、地面からの冷気を遮断して足室内の熱を逃がさずに快適な保温性を発揮するのだとか。
シューズ内部に雪が入りにくくするためと、保温性も考慮して、レヴェルⅣ EXPミッドポーラーのアッパー丈は高めになっています。
しかし、タンとの間に深いスリットを入れることで足入れはスムーズです。
そして便利なのが、タンとアッパー後部につけられた細いループ。
これらに指をかければ、簡単に足を出し入れできます。とくに足を抜くときは力をかけやすく、重宝しました。
靴紐を通す部分は、3種類のフックやアイレットを使い分け、フィット感を微調整できます。
上部のフックは少し大きめなので、グローブをしたままの手でも靴紐を簡単にかけられます。そのために、シューズ内部の暖気を逃さないようにしっかりとフィットさせることができました。
このような工夫の相乗効果で、雪上に長時間立っていても足は温かいまま。
高山などのよほどの低温下ではない限り、防寒性は充分そうです。
滑りやすい雪上では非常に重要なソールも見ていきましょう。
レヴェルⅣ EXPミッドポーラーに使われているのは、“KEENフリーズラバーアウトソール”。低温下でも柔軟性を保つ特殊なラバーを採用し、接地面積を増やすことでグリップ力を高めています。
突起の上に細かな波のようなミゾのようなものが入っている他、黄色いマイクログラスファイバーの粒子である“KEENポーラートラクションアウトソール”が配されている。
特徴が異なる2つの素材のコンビネーション、対応力を強化しているわけです。
アウトソールをさらに細かく見ると、KEENフリーズラバーアウトソール”よりも“KEENポーラートラクションアウトソール”のほうが、ほんのわずかに出っ張っていることがわかります。
はじめにザラついたソールで滑りを止め、そこから柔らかなソールでさらにグリップ力をプラスするという設計です。この細かさには感心させられます。
それでも、さすがにアイスバーンのツルツルな地面ではいくらか滑ります。
とはいえ、クルマで圧雪された程度の路面であれば、転倒の心配はわずかなものです。
このソールは、雪が付着しにくいことも利点のひとつです。
もちろん歩いていれば、ある程度の雪はソールについてしまうのですが……。
ソールの突起の間がわりと広めにとられているために、大半の雪は歩いているうちに外れていきました。
これで当初のグリップ力も復活です。
次に細かな部分もチェックしていきましょう。
靴紐のいちばん先の部分の近くには金属製のDリングが付いています。
これはゲイターのフックを引っかけるためにわざわざ付加されたパーツです。
一般のシューズはゲイターのフックをそのまま靴紐にかけるので、靴紐を傷める恐れがあります。しかし、このように金属同士であれば問題ありません。
以下の写真は、レヴェルⅣ EXPミッドポーラーにゲイターを合わせた状態です。
Dリングの効果もあって、ぴったりとフィット。シューズのアッパーが上まで延長されたような状態でレヴェルⅣ EXPミッドポーラーを使えるようになります。
こうなると、もはやロングブーツ。深い雪でも安心です。
ちなみに、ゲイターは自分の足のサイズに合わせて、別途用意する必要があります。
レヴェルⅣ EXPミッドポーラーのかかとは、 “シェルバックヒール”と呼ばれる 硬いゴムで守られています。
かかとのアウトソールの上で、横に二本の線が入っているのが、シェルバックヒールの部分です。
この部分を利用すれば、シューズ内部のかかとに負担をかけることなく、スノーシューや簡易アイゼンを組み合わせることができます。
この部分には滑りにくい素材が使われており、スノーシューのストラップもずれません。
スノーシューを組み合わせれば、ますます深雪でも行動しやすくなります。
雪のなかに沈み込まず、前方に移動しやすく、もちろんシューズ内部は温か。今回の雪上トレッキングは快適でした。
忘れてはいけないのが、キーンのシューズの一大特徴でもある、頑丈なラバーを使ったつま先のプロテクションです。
雪のなかに転がっていた岩を見つけ、あえて思いっきり足をぶつけてみました。それでも強い衝撃は伝わってくるものの、まったく痛みはなし。さすがキーンです。
このような硬いつま先なので、登り斜面では雪を蹴りこんで滑らないように歩くこともできます。
先が尖った本格的なアルパインシューズに比べれば、蹴りこめる雪の硬さは限定的ですが、それでも予想以上に頑張ってくれました。
同様にシェルバックヒールで守られたかかとも雪面に食い込みます。
それほど硬くはない雪質であれば、下り斜面でも歩行が安定しました。
さて、最後にお伝えしたいのが、レヴェルⅣ EXPミッドポーラーの“価格”のこと。雪山用のシューズにはさまざまなタイプがありますが、本格的なアルパインシューズは非常に高価です。一方、あまり激しい行動を想定していない保温メインのシューズは安価なものの、アクティブに遊びやすい構造とは言えません。その点、このレヴェルⅣ EXPミッドポーラーは、アクティブに遊べる機能と防水機能と保温力をもちながら、リーズナブルな価格なのです。
冬の低山トレッキング、スノーシューハイキングに加え、スキー場への行き帰りにも気軽に使えます。大雪の日には街でも活躍しそうですね。