熊本の田んぼで、福島の子どもたちのお米を育てよう
KEENアンバサダーのシンガーソングライター東田トモヒロさんの活動「change the world」、循環型オーガニック農園「のはら農研塾」、そしてKEENによるプロジェクト「Rice Field FES. 」がスタートしました。「 福島の子どもたちに食べてもらうお米を、熊本で育てよう」がコンセプト。第一弾の「田植えワークショップ」が、2019年 6/29(土)30(日)に、とびきりの笑顔とともにミッションコンプリートです。
「Rice Field FES. 」が目指すもの。
遠くからも良く見える白とブルーのティピーをめざしていくと、目的の田んぼが広がっていました。朝、曇り空からポツポツと落ちていた雨は、田植えを始める9時頃には、大粒の直線的な雨になりました。見渡す限りの緑が雨に煙っています。田んぼのぬかるみに足を入れると、雨が不思議と気にならなくなりました。
東田トモヒロさんが地元の熊本市植木町の仲間たちと「change the world」プロジェクトを始めたのは2012年。「子どもたちへたくさんの元気を届けたい」と、福島県南相馬市よつば保育園に旬の野菜や果物を送るこのプロジェクトは今年でもう7年目を迎えます。
地元の農家さんや農園、クリエイター、全国のファンやサポーター企業といった仲間のみなさんと 積み重ねてきた活動はその歩みを進め、今年またひとつ大きなスタートラインに立ちました。
それが「Rice Field FES. 」です。無農薬で育てたお米をよつば保育園の子どもたちに食べてもらうために、約1反(1,000ha)の田んぼで、田植え、草取り、稲刈りまでおこない、南相馬まで届けたい。この思いを共有し、「のはら農研塾」監修の下、KEENが加わり、プロジェクトがスタートしました。
田植えを楽しいイベントにしたのは、雨。
「のはら農研塾」のリーダー野原健史さんのレクチャーから、田植えがはじまりました。私たちが植える苗はすべて「のはら農研塾」のみなさんが苗床で育て、昨日のうち田んぼに届けてくれていました。
「3~4株より少し多めに、気持ちを込めてねじこむように植えていきます。手植えは植える人の気持ちが入るから、倒れにくいんです」
野原さんから昔ながらの手植えのしかたを教わった後、子どもと大人合わせて40人ほどが2チームにわかれ、2枚の田んぼに入り横一列に並びます。
目の前に張られた糸に等間隔にならぶ赤い印にあわせて、苗を植えていきます。この糸は、苗をまっすぐ手植えするため昔から使われてきた「田植え縄」。東田さんと仲間のお一人が両端を畦道で持ち、みんなが苗を植え終えたら30~40cmの間隔で移動します。こうして1列づつ田植えが進んでいくんです。
初めは雨を嫌がっていた子どもたちも、やがて田植えに集中していきました。夢中になると天気なんて関係ないんですね。大人も同様で、田んぼの半分ほどに来たら、メンバーの間から田植え歌がはじまり、やがてオリジナルの田植えヒップホップや田植えロックに発展。みんなの大歓声をバックにフェス感いっぱいの田植えになりました。2枚の田んぼが完了するまで2時間ほど。雨の中、ミッションはぶじ達成されました。
よつば保育園ヨシユキ先生と子どもたち。
うれしいことが、もうひとつありました。よつば保育園の副園長ヨシユキ先生が、南相馬から田植えにかけつけてくれたのです。
よつば保育園は福島第一原発から約25km。ヨシユキ先生は、3.11直後にいち早く園の敷地や園児の自宅の除染に取り組まれたり、外遊びの場づくりをされたりと南相馬の子どもたちのために、奔走されてきました。避難解除になった直後25人だった園児も200人以上になり人気の園になっている今も、給食には県外の食材を必要とされています。
「change the world」は、これまでも植木町の名産であるスイカをはじめ、ダイコン、ニンジン、ズッキーニなどさまざまな野菜や果物、お米をよつば保育園に送ってきました。スイカは4~5月に出荷するため、よつば保育園は東北で一番早くスイカが食べられる保育園なのだそうです。
長いおつきあいでファミリーのような関係になっていた植木町のみなさんと、人生で初めての田植え経験を共有されたヨシユキ先生。遠く離れた同士だからこそ、こうして顔をつきあわせ、つながることがなによりもだいじなこと、とおっしゃいます。ティピーの中に、よつば保育園の子どもたちからのかわいいメッセージが飾られていました。
KEENも、プロジェクトの一員として。
KEENと東田トモヒロさんとの関わりは長く、「change the world」の活動も2016年からサポートさせていただいていました。今回の田植えワークショップは、「Rice Field FES. 」としてコラボレーションする最初のアクションです。
田植えに参加した後、フェス参加者全員に「Rice Field FES. オリジナルTシャツ」をご自身で無料で作っていただくシルクスクリーンプリント ワークショップ、そして「FEEL GOOD STORE by KEEN 」としてシューズのチャリティー販売をさせていただき、売上げの50%を「change the world」に寄付させていただきました。今後も機会のあるごとに、プロジェクトの一員として参加していきます。
「おいしい」を共有する時間が、つながりを強くする。
お昼ご飯は、近所の公民館で「のはら農研塾」のみなさんが育てた無農薬米と赤米をブレンドしたご飯と無農薬野菜がたっぷりのカレーライス、そして無農薬野菜のサラダをいただきました。熊本市内でオーガニックレストランを営んでいた東田さんの奥様、くみこさんたち「Rice Field FES. 」の女性陣が腕をふるってくださったおいしい料理の野菜たちは、ほぼすべてが「change the world」のみなさんの畑で育ったものです。
キッチンとアウトドアがひとつながりの土地だからこその豊かさは、スタッフのみんなで、東田家にあつまり、いただいたとびきりの食事にもあふれていました。つくること、食べること、つながること。「Rice Field Fes.」に流れているテーマは、お米を育てるだけでなく、じつはこうした人のつながりそのものなのではないか、と気がつきました。
熊本もまた2016年の地震で大きな被害を受け、その復興は今も道の途中。災害にも強く環境負荷も少ない暮らしへの模索も続きます。東田さんファミリーは、オフグリッド・ソーラーと自然エネルギー会社のサービスを併用し、電気はほぼ自然エネルギー100%で賄っています。機材を揃えレコーディングも自宅で行っているそうです。「子どもたちが学校にいる10時から4時までがレコーディングタイムです。いま新作に取り組んでいて、秋口には一曲配信できそうです」。楽しみです。
福島と熊本。災害という体験を共有している分だけ、つながりが強くなる。暮らしに意識的になる。だからこそ、元気に芯がある。情があって、あたたかい。「Rice Field Fes.」を通して、KEENもその輪のなかで、よりよい社会のカタチづくりを探していきたいと考えています。
2日目の日曜日は朝から大雨の避難勧告が出され、イベントは中止となりました。それでも雨が降っていなかった午前中にスタッフのみんなで田植えを敢行。今回のミッションは無事フィニッシュさせることができました。
KEENは、なぜ米作りをするのか?
「Rice Field Fes」は、KEENにとってふたつめの米作りです。ひとつめは、新潟県十日町市松代の里山にある「まつだい棚田バンク」の里親として参加している「KEEN 田んぼ」での米作り。棚田は多種多様な動植物が棲息し、豊かな生態系を築いている場所ですが、過疎化や高齢化による担い手不足などで、維持が難しくなっています。その棚田を継承することを目的として社員が田植えや稲刈りなどに参加しています。
「Rice Field Fes」で収穫されたお米は、この秋、福島県南相馬市のよつば保育園の子どもたちにお届けする予定です。3.11から8年が経ちましたが、よつば保育園は、給食の食材を今も県外産の食材でまかなっています。KEENも少しでもそのサポートができれば、と考えています。
それぞれ背景が異なるふたつの米作りに、KEENは微力ながらもこれからも取り組んでいきます。
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